授業を変える
生成AIとICTで
学びの入口を増やす
ChatGPTとロイロノートによる振り返り指導、デジタル教科書の選択肢、そしてICTだけでは救えない算数の困り感を、実際の取り組みをまとめます。

一つの方法へ全員を合わせるのではなく、その子が学びに参加するための選択肢を用意することを大切にしています。

01
振り返りが書けない三つの理由
「頑張った」「楽しかった」という短い感想で終わります。
先生が見るだけだと思うと、適当に済ませようとします。
全員分を読み、質を高めるコメントを書くには時間がかかります。
私は10年間振り返りを書かせ、ChatGPTを1年間使った経験から、評価とフィードバックの下書きをAIに補助してもらう方法を考えました。
02
ChatGPTとロイロノートで処理する
私は提出時間を5分に設定し、内容は濃く、短時間で出すことを習慣にしました。画面には6件ずつ表示すると、ChatGPTの分析結果と照合しやすくなりました。画面サイズによって、見やすい件数は調整します。
- 5分で提出ロイロノートの提出箱へ、振り返りをテキストで提出させます。
- 無記名表示スクリーンショットへ個人情報が入らないよう、提出箱を無記名に切り替えます。
- 6件ずつ撮影画面に6件を拡大表示し、スクリーンショットを撮ります。
- プロンプトと画像を送る初回はプロンプトと画像を一緒に読み込ませます。同じ会話では、2回目以降は画像だけで処理できました。
- 教師が返すSplit ViewでAIの結果を見ながら、Apple Pencilで提出箱へ手書きします。評価ごとに決めたスタンプも付け、その意味を子どもへ伝えました。
03
AIの出力をそのまま返さない
ここでは、教師がAIの結果を見ながら手書きで転記・調整します。記事を書いた時点では提出箱への返却が手書き中心だったこともありますが、それだけが理由ではありません。
「写経」のように転記すると、AIが出した汎用的な分析を自分の中へ取り込み、個々の子どもへすらすら書ける力につながります。AIの意見をうのみにせず、自分の考えを加えることも指導力を磨く過程だと考えました。
最終判断は必ず教師が行い、必要に応じて修正する。
評価には、課題発見、改善策、実行意欲、自己評価、メタ認知、数学的思考などの観点を使い、子どもが次の具体的な行動を考えられる問いかけを40〜60字で作らせています。
04
実際に使用した二つのプロンプト
最初に作ったプロンプトではA評価が多くなり、評価が甘いと感じました。そこで、ルーブリックとチェックリストを細かくした「厳しめ版」も作りました。最初にプロンプトを読み込ませるか、振り返りのスクリーンショットと一緒に送って使います。
提出箱を無記名表示にしてから撮影します。AIの評価は下書きとして扱い、教師が必ず内容を確認します。
A評価優しめ版の全文を開く
あなたは、小学生の自己調整学習をサポートする教育コンサルタントです。 対象は、小学生が苦手を見つけ、次の学習に活かすための振り返りをより良く書けるようにしたい子どもたちです。 【目的】 小学生が書いた「振り返り文」6つに対して、次の要素を提供してください。 1)評価(A/B/Cのいずれか) 2)評価の理由(次の4つの視点で簡潔に) ・課題発見力:どこが苦手か、なぜ苦手かを具体的に捉えているか ・改善策の具体性:何をどのように、どれくらい行うか明確か ・実行・継続意欲:実際に行動する、または継続する意思があるか ・自己評価・自己成長の視点:前回比や達成感、今後の課題意識があるか 3)フィードバック(40字以内) ・子どもが具体的な行動を起こせる問いかけや簡潔なアドバイス 4)振り返りの書き方アドバイス ・上のフィードバックと合わせて40字以内で示す 【出力形式】 【1)振り返り文】 (本文) 評価:X 評価の理由: ・課題発見力:… ・改善策の具体性:… ・実行・継続意欲:… ・自己評価・自己成長の視点:… → 総合してXと判断。 フィードバック+書き方アドバイス(40字以内): 「…」 これを6文分、順に出力してください。 入力する振り返り文は画像の中から抽出してください。 小学生に伝わる簡単な言葉を使い、次の行動を考えやすい問いかけやアドバイスを心がけてください。
A評価厳しめ版の全文を開く
あなたは、小学6年生の算数における自己調整学習をサポートする教育コンサルタントです。 以下の振り返り文について、それぞれ評価とフィードバックを作成してください。評価基準や表現は、小学6年生にも分かりやすい言葉で記述してください。 【評価基準】 振り返りをA・B・Cの3段階で評価し、ルーブリックとチェックリストを明確に適用してください。 〈A評価〉 ・課題が具体的で、原因分析ができている ・改善策が明確で、実行可能な行動計画がある ・次のステップを考えている ・学習方法についての振り返り(メタ認知)がある ・異なる解法の比較や日常生活との関連など、数学的思考を深めている ・中学への準備や将来の活用など、長期的な目標がある 〈B評価〉 ・課題や改善策はあるが具体性が不足している ・学習意欲はあるが次のステップが明確でない ・学習方法への振り返りや数学的思考の深まりが浅い ・長期的な目標が書かれていない 〈C評価〉 ・課題や改善策が曖昧、または書かれていない ・「楽しかった」「難しかった」などの感想だけで終わっている ・極端に短く、次の行動につながる記述がない 【評価する項目】 課題発見力/改善策の具体性/実行・継続意欲/自己評価・自己成長/メタ認知/数学的思考/長期的な目標/協働学習/内容の深さと文量 【出力形式】 【1)振り返り文】 (振り返り文の本文をそのまま記載) 評価:A/B/C 評価の理由:各評価項目について記載 → 総合して(評価)と判断。 フィードバック+書き方アドバイス(60字以内): 「小学6年生が具体的に改善できるアドバイス」 【助言例】 ・改善策が曖昧:「どんな練習をするか、例えば図を使うなど具体的に書くと良いね!」 ・メタ認知が不足:「どうやって学んだか、工夫したことを書いてみよう!」 ・数学的思考が浅い:「違う解き方がないか考えると、理解が深まるよ!」 ・課題が不明確:「どこが難しかったのか、もっと具体的に書いてみよう!」 ・改善策がない:「次にどうしたらできるようになるか、考えてみよう!」
05
デジタル教科書は学び方を選ぶための道具
ここでは「紙より学力が上がるか」だけでなく、文字を読むことが難しい子、音声読み上げがある方が理解しやすい子、従来の方法では集中が続かない子が、学びの土俵へ立てる価値を重視しています。
読むことの困難を補います。
見え方に合わせて調整できます。
教科書の持ち運びや忘れ物を減らす可能性があります。
紙、板書、協働、デジタルを選択肢として捉えます。
ゲーミフィケーションについても、学力を伸ばす前に、学習へ参加できなかった子が参加する入口になることに価値があると考えています。
06
生成AIは教師の代わりではなく学びのパートナー
算数の演習中、子供が自分の解答を撮影してAIへ確認させ、正誤、間違えた箇所、ヒントを得る使い方を紹介します。
「あなたは小学校○年生の算数教師です」「答えは教えずヒントを出してください」「小学生にも分かる言葉で説明してください」
一人の教師が限られた授業時間で全員へ最適な学びを提供することは難しいからこそ、板書、学び合い、プリント、自己調整学習、デジタル教科書、生成AIを選択肢として捉えています。
07
ICTで救えない三つの困り感
適切なレベルの問題を十分に解くこと、教科書・図解・検索・AIから本人に分かる方法を選ぶことも大切だと述べています。
ICTで支えられる部分と、人の手や具体的な道具が必要な部分を見極める。