第2章で見てきたように、
ICT担当が潰れてしまう学校には、共通した構造がある。
仕事の量が多いのではない。
仕事を引き受ける前提が、最初から間違っている。
私自身、その構造の中に入りかけていた。
だからこそ、
あるとき、はっきりと決めたことがある。
「全部はやらない」
という判断だ。
最初に手放したのは「単純作業」
私が最初に切り分けたのは、
高度な判断が必要な仕事ではない。
単純作業だった。
自分がやっても、
他人がやっても、
成果も時間も大きく変わらないもの。
そして、
とにかく時間がかかりそうなもの。
ここを境に、
ICT担当としての仕事の進め方が、
大きく変わった。
判断基準は、驚くほどシンプル
切り分けるときの基準は、
とても単純だ。
- それは、私でなければできないか
- 私がやることで、質が大きく上がるか
- 判断や調整が必要か
このどれにも当てはまらない仕事は、
ICT担当が抱える仕事ではない。
端末の箱出し。
初期設定。
番号管理。
データ入力。
シールの貼り替え。
どれも必要だ。
どれも大事だ。
でも、
ICT担当がやらなくてもいい。
「時間がかかる仕事」ほど、先に手放す
特に厄介なのは、
一つひとつは簡単なのに、
数が多い仕事だ。
一台なら数分。
でも、それが何十台、何百台になる。
こうした仕事を
「空いた時間でやろう」と考えた瞬間に、
破綻が始まる。
だから私は、
時間がかかりそうなものほど、
最初から自分の手から離す
と決めた。
手放すことは、責任放棄ではない
「任せる」と言うと、
無責任に聞こえるかもしれない。
でも実際は、まったく逆だ。
- どこまで任せるかを決める
- 条件を整理する
- 成果を確認する
これらは、
ICT担当にしかできない仕事だ。
手を動かさない分、
頭を使う。
ICT担当の仕事は、
作業量ではなく、
判断の質で決まる。
自分が「やる」と残した仕事
単純作業を手放したあと、
私が自分の仕事として残したのは、
次のような役割だった。
- 現場の先生たちの困り感や課題を見つけること
- 言葉にならない違和感を拾うこと
- そこから、0を1にする仕組みを考えること
そして、
それを学校全体のシステムとして浸透させていくこと。
ここは、
外部には任せられない。
0から1は、日常の中にある
課題は、
会議室から生まれるわけではない。
日々の会話や、
何気ない観察の中にある。
特に意識しているのは、
三つの視点だ。
- 新規採用の若手教員の声
- 働き方が定着しているベテラン教員の感覚
- 管理職との対話
さらに、
職員室でふと目に入るデスクワーク。
「これって、今何をしているんですか?」
そこから始まる雑談の中に、
本当の困り感が隠れていることが多い。
作っただけでは、意味がない
0から1を生み出しても、
それだけでは終わらない。
学校全体に広がって、初めて意味を持つ。
そのためには、
調整が欠かせない。
- ICTが得意な人
- 苦手な人
- 忙しさの度合い
- 役割の違い
同じ仕組みでも、
受け取り方は人それぞれだ。
ICT担当は、
このズレを見過ごさず、
少しずつ整えていく役割だ。
「個人」と「全体」を天秤にかける
先生一人ひとりのこだわりは、
できる限り尊重したい。
ただし、
一部のこだわりによって
学校全体の効率が明らかに落ちる場合は、
全体を優先する。
その代わり、
ついて来づらい先生のフォローは、
精一杯行う。
- 操作を簡単にする
- 手順を減らす
- 個別に声をかける
全体を整えることは、
個人を切り捨てることではない。
ICT担当は「作業者」から「設計者」へ
こうして、
単純作業を手放し、
自分の役割を定めたことで、
ICTは少しずつ回り始めた。
ICT担当の仕事は、
何でもやることではない。
学校が無理なく回るように、
仕事を設計すること。
この意識を持てたことが、
その後のすべての判断の軸になっている。
次章へ
ICTで「やらない」と決める勇気
次の第4章では、
ICTで解決しないと判断した事例、
あえてアナログを選んだ場面について書く。
ICT担当は、
何をやらないかを決める仕事でもある。



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