【第三章】「全部やらない」と決めたとき、ICTは回り出す

業務改善

第2章で見てきたように、

ICT担当が潰れてしまう学校には、共通した構造がある。

仕事の量が多いのではない。

仕事を引き受ける前提が、最初から間違っている。

私自身、その構造の中に入りかけていた。

だからこそ、

あるとき、はっきりと決めたことがある。

「全部はやらない」

という判断だ。

最初に手放したのは「単純作業」

私が最初に切り分けたのは、

高度な判断が必要な仕事ではない。

単純作業だった。

自分がやっても、

他人がやっても、

成果も時間も大きく変わらないもの。

そして、

とにかく時間がかかりそうなもの。

ここを境に、

ICT担当としての仕事の進め方が、

大きく変わった。

判断基準は、驚くほどシンプル

切り分けるときの基準は、

とても単純だ。

  • それは、私でなければできないか
  • 私がやることで、質が大きく上がるか
  • 判断や調整が必要か

このどれにも当てはまらない仕事は、

ICT担当が抱える仕事ではない。

端末の箱出し。

初期設定。

番号管理。

データ入力。

シールの貼り替え。

どれも必要だ。

どれも大事だ。

でも、

ICT担当がやらなくてもいい。

「時間がかかる仕事」ほど、先に手放す

特に厄介なのは、

一つひとつは簡単なのに、

数が多い仕事だ。

一台なら数分。

でも、それが何十台、何百台になる。

こうした仕事を

「空いた時間でやろう」と考えた瞬間に、

破綻が始まる。

だから私は、

時間がかかりそうなものほど、

最初から自分の手から離す

と決めた。

手放すことは、責任放棄ではない

「任せる」と言うと、

無責任に聞こえるかもしれない。

でも実際は、まったく逆だ。

  • どこまで任せるかを決める
  • 条件を整理する
  • 成果を確認する

これらは、

ICT担当にしかできない仕事だ。

手を動かさない分、

頭を使う。

ICT担当の仕事は、

作業量ではなく、

判断の質で決まる。

自分が「やる」と残した仕事

単純作業を手放したあと、

私が自分の仕事として残したのは、

次のような役割だった。

  • 現場の先生たちの困り感や課題を見つけること
  • 言葉にならない違和感を拾うこと
  • そこから、0を1にする仕組みを考えること

そして、

それを学校全体のシステムとして浸透させていくこと。

ここは、

外部には任せられない。

0から1は、日常の中にある

課題は、

会議室から生まれるわけではない。

日々の会話や、

何気ない観察の中にある。

特に意識しているのは、

三つの視点だ。

  • 新規採用の若手教員の声
  • 働き方が定着しているベテラン教員の感覚
  • 管理職との対話

さらに、

職員室でふと目に入るデスクワーク。

「これって、今何をしているんですか?」

そこから始まる雑談の中に、

本当の困り感が隠れていることが多い。

作っただけでは、意味がない

0から1を生み出しても、

それだけでは終わらない。

学校全体に広がって、初めて意味を持つ。

そのためには、

調整が欠かせない。

  • ICTが得意な人
  • 苦手な人
  • 忙しさの度合い
  • 役割の違い

同じ仕組みでも、

受け取り方は人それぞれだ。

ICT担当は、

このズレを見過ごさず、

少しずつ整えていく役割だ。

「個人」と「全体」を天秤にかける

先生一人ひとりのこだわりは、

できる限り尊重したい。

ただし、

一部のこだわりによって

学校全体の効率が明らかに落ちる場合は、

全体を優先する。

その代わり、

ついて来づらい先生のフォローは、

精一杯行う。

  • 操作を簡単にする
  • 手順を減らす
  • 個別に声をかける

全体を整えることは、

個人を切り捨てることではない。

ICT担当は「作業者」から「設計者」へ

こうして、

単純作業を手放し、

自分の役割を定めたことで、

ICTは少しずつ回り始めた。

ICT担当の仕事は、

何でもやることではない。

学校が無理なく回るように、

仕事を設計すること。

この意識を持てたことが、

その後のすべての判断の軸になっている。

次章へ

ICTで「やらない」と決める勇気

次の第4章では、

ICTで解決しないと判断した事例、

あえてアナログを選んだ場面について書く。

ICT担当は、

何をやらないかを決める仕事でもある。

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