ICT担当が潰れてしまうとき、
それは忙しさのピークが来た瞬間ではない。
多くの場合、
分からないことが分からない状態のまま、
調べ続け、考え続け、判断し続けることが積み重なり、
静かに限界がやってくる。
ICTが本業ではない、という前提
そもそも、
学校の先生の本来の仕事はICTではない。
- 授業づくり
- 学級経営
- 児童対応
- 保護者対応
それらを抱えながら、
空き時間や放課後を使って
ICT担当の仕事をしている。
この前提を忘れたまま、
「調べれば分かる」
「ICT担当なんだからできるでしょう」
が積み重なると、
両立は一気に難しくなる。
潰れる理由は「忙しさ」ではなく「両立」
ICT担当が潰れてしまうのは、
- 能力が足りないから
- 努力が足りないから
ではない。
担任業務とICT担当を、
同時に高い精度で求められること自体が、
非常に困難なのだ。
調べる時間には、
想像以上のエネルギーが必要になる。
- 情報が多すぎる
- 正解が一つではない
- 学校の環境に合うか分からない
その状態で、
本来の仕事も止めずに回し続ける。
それは、誰にとっても簡単なことではない。
今、ICT担当をしている先生方の
努力が目に浮かぶようだ。
相談は「困っている状況」だと捉える
ICT担当に寄せられる相談の多くは、
不満でも、丸投げでもない。
- 今、どう進めればいいか分からない
- 時間や余裕がなくて手が止まっている
- 少し誰かに見てほしい
そんな困っている状況が背景にある。
だから私は、
最初から線を引いたり、
機械的に断ったりはしない。
まずは、現場を見る
相談を受けたら、
まずは実際の状況を一度、見に行く。
その場で数分で終わることであれば、
その場で対応する。
これは、
作業効率のためだけではない。
「ちゃんと見てくれた」
という安心感が、
信頼につながるからだ。
時間がかかるものは、その場で抱え込まない
一方で、
明らかに時間がかかりそうな内容については、
その場で抱え込まない。
そういうときは、
こう伝える。
「これは少し時間がかかりそうなので、
学校サポートスタッフの方にお願いするか、
次にICT支援員が来たときに対応しますね」
大切なのは、
「やらない」と言わないことだ。
「今はやらないが、
解決までの道筋は示す」。
それだけで、
相手は安心する。
管理者権限が必要な話は、役割を分ける
要望や不満が、
システムや管理者権限に関わる内容であれば、
学校だけで完結させない。
共感を示した上で、
はっきりと伝える。
「それは学校だけでは判断できないので、
教育委員会のICT係に相談しますね」
ICT担当は、
すべてを決める立場ではない。
決める人と、つなぐ人を
切り分ける役割を担っている。
視座が違う、ということ
ここで、
私が常に意識している考え方がある。
それぞれが立っている視座が違う
ということだ。
先生は、
目の前の困りごとを
「今日」「今すぐ」解決したい。
管理職は、
学校全体への影響やリスクを考える。
教育委員会は、
制度・予算・責任といった
さらに広い範囲を見て判断している。
どれかが正しくて、
どれかが間違っているわけではない。
見ている景色が違うだけなのだ。
意識的に、視座を変える
人は無意識のうちに、
自分の立場からしか物事を見られない。
だからこそICT担当は、
意識的に視座を変える。
- 今、先生は何を見ているのか
- 管理職は、どんな責任を背負っているのか
- 教育委員会は、何を優先しているのか
それを一度、想像してみる。
すると、
相手の反応は
「理不尽」ではなく
「立場として自然な判断」に見えてくる。
断られたときに、必ずやること
事前に準備して提案しても、
教育委員会から
「今回は難しい」と言われることは多々ある。
そのとき、
私が必ず行うのは次の三つだ。
- 感謝を伝える
- 判断を受け止める
- 可能であれば理由を聞く
理由が分かれば、
再提案も、見送りも、
納得をもって選べる。
80%で返してもいい、という考え方
誤解してほしくないのは、
「断ること」が目的ではない、ということだ。
正直に言えば、
これくらいなら今やってしまった方がいい
と思うことも多い。
数分で終わることや、
その場で片づけた方が
学校全体として負債を残さずに済むこともある。
そういうときは、
私はやってしまう。
完璧でなくていい
ただし、
最初から完璧な形で返す必要はない。
不完全でも、
80%くらいの完成度で一度返してあげても十分
だと考えている。
困っている状況に対して、
少しでも前に進めるなら、
それは十分意味がある。
一言添えることが、大事
80%で返すときは、
必ず一言添える。
「もし、
何かもっとこうしてほしいところがあったら、
遠慮なく言ってください」
この一言があるだけで、
不完全さは
押しつけにも、手抜きにもならない。
一緒に仕上げていく前提になる。
ICT担当は、断る人ではない
ICT担当は、
仕事を断る人ではない。
仕事の持ち方を調整する人だ。
視座を行き来し、
判断を言葉にし、
必要なら任せる。
それは、
ICT担当自身を守るためであり、
同時に、
学校の本来の仕事を守るためでもある。



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