【第一章】『学校ICT担当の仕事は「整える」ことだった』

業務改善

ICT担当になった日から、仕事は増える

ICT担当になって、最初に「これは無理だ」と思ったのは、最新のICTや難しい設定ではなかった。
GIGA端末、全台分の箱を開ける作業。
一台一台を取り出し、起動し、初期設定をしていく。
その横で、端末番号や使用者を管理台帳に入力していく。
やっていること自体は、決して難しくない。
誰にでもできる、単純な作業だ。
それなのに、数が多い。
とにかく時間がかかる。
気が付けば、丸一日、あるいは何日もそれだけで終わってしまう。
「これを、全部自分がやるのか……」
ICT担当になった瞬間に任されたのは、
“未来の教育”でも、“最先端のICT活用”でもなく、
膨大な量の単純作業だった。
管理台帳の作成。
端末データの入力。
確認、修正、また確認。
どれも大事だ。
どれも必要だ。
でも、子どもと向き合う時間は、確実に削られていく。
このとき初めて気付いた。
ICT担当が一番最初につまずくのは、
「スキル」でも「知識」でもなく、
“時間を奪われる構造そのもの”なのだと。
そのとき、私ははっきりと
「誰かに頼めばいい」と思った。
端末一台の初期設定に、数分。
それ自体は大した時間ではない。
けれど、それが何十台、何百台となれば話は別だ。
単純計算でも、かかる時間は簡単に見積もれてしまう。
そして、その時間の大半は、ただ黙々と手を動かすだけの作業だ。
私は教師だ。
私の本質的な仕事は、教育にある。
この作業は、
「私でなければできない仕事」ではない。
もし、ここに時間を使えば、
その分、必ず削られる時間がある。
授業準備。
子どもと話す時間。
同僚と相談する時間。
ICT担当になったからといって、
教育が仕事でなくなるわけではない。
それなのに、
「ICT担当だから」という理由だけで、
膨大な単純作業を一手に引き受けるのは、
どう考えても合理的ではなかった。
ここで初めて、
私は“トレードオフ”という現実に向き合った。
時間は増えない。
何かを選べば、何かを手放す。
だからこそ、
「全部を自分でやる」という選択は、
最初からあり得なかった。

「最初の選択」

最初に決めたことがある。
「他の先生に割り振らない」ということだ。
それは、私一人が大変だからではない。
仕事を分配したところで、
今度は別の先生の時間を同じように削るだけだと分かっていたからだ。
誰かの負担を軽くするために、
別の誰かの負担を増やす。
それは、働き方改革でも、ICT活用でもない。
本当に考えるべきなのは、
校内でどう分けるかではなく、校外の力をどう使うかだった。
そこで目を向けたのが、
外部の人材と制度――特にICT支援員の存在だ。

「ほぼ全振り」でいい仕事がある
日程を先読みしておけば、
指定した日にICT支援員の予約を入れることができる。
端末の箱出し。
初期設定。
番号管理。
これらは、個人情報を一切含まない作業だ。
だからこそ、一括して任せられる。
ほぼ全振り。
私は最後に、

○何を
○どのように
○どうなっているか

を確認するだけでいい。
ICT支援員はプロだ。
責任をもって、きちんと仕事をしてくれる。
もし、期待した結果にならなかったとしたら、
それは支援員の問題ではなく、
こちらの頼み方がアバウトすぎた可能性が高い。

「頼み方」はスキルである

私は、依頼の際に必ず次のことを明確にする。

○いつまでに
○何を
○どのように
○どれくらい
○どうしてほしいのか

そして、
途中経過を早い段階で連絡してもらう。
散々やったあとで、
「そうじゃない、やり直して」
と言われたら、誰だってモチベーションは下がる。
ICT支援員も、人だ。
だからこそ、
お互いのために、最初のすり合わせは丁寧に行う。

結果として何が起きたか

その結果、
これらの作業は丸一日で、完璧に完了した。
○設定作業
○確認
○ゴミの始末
○全台を保管庫に戻す

私はその間、
授業や子どもへの対応に時間を使うことができた。
これが、
「誰かに頼る」ことで失われたものではなく、
取り戻した時間だった。

それでも、うまくいかないことはある
一方で、
働き方改革の一環として、
GoogleスプレッドシートやExcelの関数を使った
校務用システムを外部に作ってもらうこともあった。
ただ、そのとき感じたのは、
現場の肌感と、外部のイメージのズレだ。
完成したものを見て、
「もっと現場のニーズを、ちゃんと伝えてあげればよかったな」
と思うことも正直あった。
外部の力は強力だ。
でも、
現場の言語に翻訳する役割は、ICT担当にしかできない。

ICT担当の仕事とは何か

この経験を通して、
私の中で、ICT担当の仕事の定義ははっきりした。
ICTの仕事は、仕組みを作ることだ。
私たち教師が、
本質的な仕事――
子どもと向き合い、授業をつくり、学びを支えることに
集中できるようにするための仕組みを整える。
ICT担当が、
すべてを抱えることではない。
現場には、日々さまざまなニーズや課題が生まれる。
それをただ受け止めて処理するのではなく、

○何が問題なのか
○どこに無駄があるのか
○どうすればもっと楽になるのか

を考え、解決の形を創造することが、
ICT担当の役割だと思うようになった。
そしてもう一つ、大切な視点がある。
それは、
「自分がやること」と
「アウトソースすること」を、
意識的に振り分けることだ。
すべてを自分でやろうとすれば、
スピードは落ちる。
確実性も下がる。
そして、必ずどこかで無理が出る。
だから私は、
自分が手を動かすべき部分と、
外部の力を借りる部分を切り分けながら、
より早く、より確実に、物事を前に進めることを選ぶ。
ICT担当とは、
「何でもできる人」ではない。
学校という現場が回るように、
仕事を“設計”する人なのだ。

【第二章】続きはこちら

【第ニ章】ICT担当が潰れる学校の共通点
問題は「仕事が多いこと」ではないICT担当が大変なのは、仕事の量が多いからではない。本当の問題は、仕事が集まり方を間違えていることだ。ICT担当に集まる仕事は、一つひとつを見れば、それほど難しくないものが多い。しかし、それらが断続的に 同時...

コメント

タイトルとURLをコピーしました